「M&Aのマッチングサイトって本当に便利だよねー。」
そのような声が最近よく聞くようになりました。
完全に市民権を得た感じですね。
私もいくつかのサイトに登録したり、お客さんに紹介したりして、確かにその便利さを実感しているところであります。
どこかのファストフードではないですが、果たしてM&Aマッチングサイトは「早い」「うまい」「安い」のでしょうか?
そこで、ちょっと考えてみました。
1つずつ解説したいと思いますので、今回は「早い」をテーマに検証したいと思います。
ここで先に結論を言ってしまいますと、「ネットの特性によるもの」、「M&Aプロセス進行に便利な付随サービスを提供していること」の2つと考えられます。
目次
「ネットの特性」がM&Aプロセスの進行を早める
以下のとおり、ネット経由の方がマッチングがとてもスムースに進めることができるので、M&Aを成約に結びつくことが早くなることにつながります。
M&Aマッチングサイトは、その名の通り、M&Aプロセスの中でマッチング業務が主たるものになります。
マッチングって一言でいいますが、実は結構難しい、というか、どれだけ時間がかかるか分からないプロセスであるんですね。
いい相手が見つからないと、いつまでたってもお付き合い(=具体的なM&Aプロセスに入っていって協議を進めていく)をすることができないわけです。
そして、いい相手かどうかの見極めは、M&Aマッチングサイトに登録した売り手あるいは買い手の捉え方次第です。
M&Aマッチングサイトだと、サイトに登録した後にちゃちゃっと検索すれば、いろいろな案件を即座に確認することができます。
登録案件の数が多く、秒速で初期的な情報を確認することができるわけです。
それがリアルM&Aであると、そんなに数をこなすことができないわけです。
いちいち人を介して、紹介してもらって、というサイクルを繰り返す必要があるからです。
はっきりいってしまうと、人を介在してなんちゃらかんちゃらという煩わしさが伴うわけですね。
そして、リアルM&Aの場合、どれだけのサイクルを回すことができるかというのは、介在者がマッチングにどれだけ汗をかいて動いてくれるか(M&A専門家の場合は、おいしい案件かどうかというところが多分にあるでしょう)ということになります。
補足ですが、どれだけ売り手・買い手の意図を組んで動いてくれるかというのは、M&A専門家の腕次第、あるいは売り手・買い手とM&A専門家とのコミュニケーション次第というとこになります。
というように、このようなネットの特性がM&をプロセスを進めるのが早くなる理由の1つなのでしょう。
M&Aプロセス進行に便利な付随サービスを提供している
M&Aマッチングサイトによって、多かれ少なかれとレベル感は異なってきますが、およそ次の3つ挙げることができます
ノンネームシートの提供
ノンネームシートと書きましたが、要は、サイトに登録して、最初に自分の売りたい事業や会社についての基礎的情報として入力したものそのものが、ノンネームシートの代わりになるということです。
その情報をネット上で開示することで、ノンネームシートを買い手候補に提供していることとほぼ同一ということになるわけですね。
リアルM&Aの場合は、ノンネームシートの作成をM&A専門家にサポートしてもらうことが多いです。
また、大勢の人に一気に目に触れてもらうことはできないわけですから、とても便利な枠組みといえます。
各種契約書の雛形の提供
M&Aマッチングサイトによっては、秘密保持契約書、基本合意書、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書といったM&Aにおいて利用される契約書のドラフトが利用することができます。
ちなみに、M&Aで使われるような契約書の雛形は、ネットで検索するといろいろ無料でダウンロードできる時代です。
しかしながら、内容が適切なものかかなり怪しい可能性があります。
M&Aマッチングサイトが提供する雛形はきちんと弁護士がチェックしたものでしょうから、安心ですし、内容がより実務に沿った形となっていると思います。
だからそういう意味で、仮にM&Aプロセスを進める上で、M&A専門家を雇わなくても、「安心と安全」が一定程度確保されているともいえます。
M&A専門家を選びやすい
M&Aマッチングサイトの中には、M&A専門家のリストが開示されていることも比較的多いですね。
売り手・買い手と同じように、M&Aのビジネスを積極的に拡大していきたいと思っている方(士業の先生が多いですかね)がどんどん登録しているのです。
これはM&A専門家にとってすごくありがたいことなんです。
M&A専門家にとって、自分で営業しに行かなくても、見込み顧客が目の前に転がっているようなものですから。
一方で、売り手・買い手は、その情報がサイトの上で開示されていると、そのリストから自由にチョイスすることができるわけです。
極端にいえば、その過程で、ある程度腕のきくM&A専門家と、そうでない専門家に二極化していくことになります。
だから、中小M&Aがより適切な形で発展していくためにも、とても良いシステムだと思いますね。
M&Aマッチングサイト自体でなく、売り手・買い手の意向も「早さ」に大いに関係あり
上述のとおり、M&Aマッチングサイトは主としてマッチングのプロセスを短くしてくれるものです。
しかし、最後のクロージングに至るまでの早さは、M&Aマッチングサイトによるものだけでなく、売り手・買い手の意向も大いに関係があります。
それは、こういう事なんですね。
まず前提として知っておくべきなのは、リアルであろうとネットであろうと、行うべきM&Aプロセスの全体像というものは何ら変わらないということです。
繰り返しになりますが、マッチングに要する時間は、M&Aマッチングサイトを活用することでかなりカットすることができます。
またそれは、単に早いだけじゃなくて効率的に進めるとも言えます。
しかし、マッチングの後のプロセス、DDであったり、基本合意書を締結したり、バリエーションを実施したり、最終契約書の交渉を行ったり、と言うような一連のプロセスはM&Aマッチングサイトが主として提供するサービスの範疇から外れることが一般的です。
そして、マッチング以外のプロセスがどれだけ短縮ができるかどうかというのは、売り手・買い手の意向次第というところが大きいです。
少し大げさな例として、売り手と買い手の双方が「とっとともう成約させたい!」と考えている場合どんなことが想定できるでしょうか。
この場合、「一定のプロセス(たとえば、DD)を極力端折りましょう。」っていうような感じで売り手・買い手が合意することも考えられるわけです。
そうなると、極めて短期間でクロージングすることができる可能性が高くなるわけですね。
あと、意向というところからちょっと話はズレますが、「ネットだとスピードは早く進めれるだろう。」という直感的・心理的なイメージもあるかもしれませんね。
気持ちの問題ということで触れてみました。
そういうわけで、M&Aマッチングサイトどうこうではなく、売り手・買い手の意向も「早さ」に大いに関係あり、ということも言えるわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分でも書きながら見てみると、「M&Aマッチングサイトって確かに便利なものだ。」というふうに思います。
補足になりますが、この「早い」という話は、大手のM&Aマッチングサイトであればあるほど当てはまるのではないかと思います(例.登録案件の数が相対的に多い)。
では次回は2つ目の「うまい」について考えたいと思います。
どうぞお楽しみに。
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