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【事業譲渡】事業譲渡についてどっぷり整理してみた(概要編)

M&Aを行うに際して、どのようなスキームを用いるのかは非常に大きなポイントになります。

ところで、中小M&Aでは、どのようなスキームが使われているでしょうか。

中小M&Aは一言でいうと大規模M&Aと比べるとシンプルな取引になります。

そのため、活用されるスキームも限定的なものになります。

結論だけ先にいうと、株式譲渡、事業譲渡、後は会社分割という位になるでしょう。

そこで今回から数回に分けて、事業譲渡について掘り下げて話をしていきたいと思います。

事業譲渡スキームの概要

まず事業譲渡とは何かということですが、一言でいうと「会社の事業を第三者に譲渡するという取引」です。

株式譲渡が会社(=法人格)丸ごと譲渡するのに対し、事業譲渡は、その名の通り、会社という”器”ではなく事業を譲渡するものです。

つまり、売り手企業の経営権自体は買い手に移りません。

ちなみに、「事業」の意味ですが、厳密に定義すると次の通りとなります。

一定の事業目的のために組織化され、有機的に一体として機能する財産

しかし、これだとちょっとわかりにくいかもしれませんね。

もう少し噛み砕いていうとこんな感じになります。

「事業」とは、営業を行うための財産のこと。

有形の資産のみならず、無形財産も含む。

有形資産の例: 在庫、設備、土地、建物

無形資産の例: 知的財産、技術、流通網、取引先、顧客基盤、ブランド人材、ノウハウ

後で述べますが、事業というとなんとなく一塊りの財産というように感じるかもしれませんが、実は非常に柔軟に考えることができます。

極論ですが、単一のモノの売買というふうに思った方が理解しやすいかもしれません。

中小M&A市場における事業譲渡の立ち位置

この事業譲渡ですが、中小M&Aでは株式譲渡とともに幅広く活用されているスキームになります。

ご参考として、下の図を見ていただければいいかなと思います。

(出所)中小企業白書(中小企業庁)

M&A専門家の中には、株式譲渡は事業譲渡よりもよっぽどポピュラーだ、という印象を持たれている方が多いかもしれませんが、この図を見る限りにおいては、ほぼ頻度は同じぐらいになっています。

この一つのデータだけを見て結論付ける事は拙速かとは思いますが、少なくとも事業譲渡というスキームは中小M&Aにおいて幅広く活用されているということは間違いありません

事業譲渡の主な特徴

事業譲渡にまつわる論点は様々あります。

例えば、「株式譲渡と比較してどう違うのか?」とか、「事業譲渡のメリットやデメリットって何がある?」といったことです。

そういった論点は、別の記事として、一つ一つ小分けにして細かく解説していきたいと思います。

そこでここでは、事業譲渡の主な特徴として3点概括的に記しておきたいと思います。

譲渡の対象は自由に決めることができる

事業譲渡は、売り手・買い手双方の合意によって譲渡の範囲を自由に定めることができます。

事業の全てを譲渡することもできれば、事業の一部のみの譲渡をすることも可能です。

また、譲渡する資産を個別に選ぶことができますし、債務は一切譲渡しないということも可能です。

・・・というように、非常に柔軟に譲渡を行うことが可能なのです。

具体例を話した方が理解しやすいと思いますので、以下に列挙しておきますね。

  • 自分の手元に残したい事業以外を譲渡する
  • 高く売れそうな事業のみを譲渡する
  • 不採算事業を処分する(相手が関心を示せばですが)
  • 買い手の意向を踏まえ債務を切り離して譲渡する
  • 工場や商品は売却するけれども、それにまつわる特許は保持する

個別に譲渡手続きが必要となる

事業譲渡では、事業にまつわる個々の契約や許認可などは承継することができません。

したがって、契約相手に了解を得ながら、一つ一つ契約を巻き直す必要があります。

その大変さをイメージとしてもってもらうために、あえて細かいところにふれてみましょう。

以下列挙したような細々とした契約についても一つ一つ対応していかなければならないのです。

  • 光熱費に関する契約(電力、ガス、水道)
  • 通信費に関する契約(インターネット、サーバー管理、固定電話、携帯電話など)
  • 賃貸借契約(土地、建物、社用車など)

また、譲渡する事業にかかる従業員から、転籍の了解を取り付ける必要もあります。

従業員が転籍を拒否したり、場合によっては従業員が離職してしまうという事態も考えられます。

それゆえ、ここは非常に慎重に進める必要があるところです。

売り手の経営権は他社に移らない

株式譲渡が法人格を丸ごと譲渡するのに対し、事業譲渡は事業の一部または全部を譲渡するものです。

たとえ、事業の全部を買い手に譲渡しても、事業譲渡である限りにおいて、会社という法人格が買い手に移ることはありません。

あと、若干話がズレますが、事業譲渡の売り手は会社であるため、株主は直接譲渡対価を受け取ることができません。

その一方で、株式譲渡は会社の株主が売り手であるため、譲渡対価は株主自身が受け取ることになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

事業譲渡というスキームは、全体からみた割合から見ても、中小M&Aにおいてかなりの位置付けにあるということがなんとなくおわかりいただけたかと思います。

そして、事業譲渡の事業の意味は何かということや、事業譲渡の主な特徴を簡単に話させていただきました。

ただ、先ほども言いましたが、今回はあくまでも触りの部分だけで、事業譲渡に関するポイントや留意点は数多く存在します。

したがって、中小M&Aを検討したり、業務として携わるにおいて、事業譲渡の中身をしっかり理解しておくことはとっても大切なことなのです。

そこで、これから何度かに分けてその辺のポイントを丁寧に解説していきたいと思いますので、どうぞお見逃しにならないよう!

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