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【事業譲渡】経理処理をまとめてみた

さて、これまで、売り手と買い手に分けて、事業譲渡の税務上の取扱いについて解説してきました。

ここで、もう少し具体的なイメージを持ってもらうべく、一つ簡単な事例を紹介して理解を深めていただければと思います。

なお、全体像を理解していただきたいと言う趣旨のため、細かい部分は端折っていますので、その点はご理解ください(汗)

では、いきましょう。 

前提条件

事業譲渡実行時点の経理処理につき、以下の前提を置いて解説したいと思います(金額は百万円単位としています)。

【譲渡対象となる資産・負債の簿価】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
棚卸資産40借入金40
建物80  
土地100  

【譲渡対象となる資産・負債の直価】

これらの資産・負債の時価は簿価と同一。

【事業譲渡に伴い発生する費用(付随費用)】

売り手 10万円

買い手 20万円

【取引金額】

300万円

売り手の経理処理

売り手は、クロージング時点の簿価に基づき算出される「株主資本相当額」(譲渡した資産から負債を差し引いた額)と取引金額との差額を譲渡損益として計上します。

また、課税資産にかかる消費税を買い手から受け取ります。

なお、事業譲渡に要した付随費用は、その支出が発生した事業年度の費用として経理処理されます。

【譲渡取引の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
借入金40棚卸資産40
現預金300建物80
  土地100
  譲渡益120

【消費税の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
現預金24仮受消費税24

(注)(棚卸資産40+建物80+のれん120)×10%=24

【付随費用の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
付随費用(経費)10現預金10

買い手の経理処理

買い手は、事業譲渡により譲り受けた資産と負債をそれぞれ時価で計上します。

そして、この譲り受けた資産から負債を差し引いた額(いずれも時価)と事業の取得原価との差額を「のれん」として計上します。

取得原価には、事業譲渡の取引金額に当該取引に要した付随費用が追加されます。

そのため、買い手にとって、譲り受ける資産と負債の「時価評価」と取引金額に含められる「のれんの評価」の見極めが大切になります。

また、買い手における「のれん」の経理処理は、税務上の取扱いと会計上の取扱いが異なっているため、十分注意する必要があります。

なお、事業譲渡により譲り受けた資産に課税資産が含まれる場合には、当該資産にかかる消費税を売り手に支払います。

【譲受取引の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
棚卸資産40借入金40
建物80現預金320
土地100  
のれん140  

(注)取得原価=300万円+20万円(付随費用)=320万円

なお、のれんの償却は事業譲渡以降の処理であるため、説明を割愛しています。

【消費税の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
仮払消費税24現預金24

(注)(棚卸資産40+建物80+のれん120)×10%=24

(参考)買い手において「負ののれん」が発生する場合の経理処理

仮に、当事者間の交渉の結果、譲渡価額が100万円で成立したと仮定すると、買い手の経理処理は次のようになります。

【譲受取引の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
棚卸資産40借入金40
建物80現預金120
土地100のれん60

(注)取得原価=100万円+20万円(付随費用)=120万円

ただし、会計上は上表のように「のれん」として計上されることなく、事業を譲り受けた年度に特別利益として一括計上する扱いとなっています。

また、税務上における「のれん」の償却は事業譲渡以降の処理であるため、説明を割愛しています。

【消費税の処理】

資産(借方)金額負債(貸方)金額
仮払消費税12現預金12

(注)(棚卸資産40+建物80)×10%=12

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。

見て頂いたらおわかりかもしれませんが、一般的なモノの売買に係る経理処理と大きく変わるところはありません。

事業譲渡そのものがモノの売買の集合体ともいえますので、経理処理が大きく変わらないのは自然ともいえます。

ただ、上述の通り、事業譲渡においては買い手側に「のれん」という事業譲渡特有の処理が発生することが多いため、その点は十分留意が必要です。

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