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【事業譲渡】税務面で株式譲渡と比較すると・・・

そこで今回は税務の観点で事業譲渡と株式譲渡を比較してみました。

ただ、紙面の関係から、比較の対象は「譲渡取引そのものに由来する部分」にフォーカスしており、かつ「売り手」に限定して解説していますので、その点ご理解ください。

ではさっそく頭の整理をしていきましょう。

納税義務者 

まず譲渡取引にかかる納税義務者ですが、事業譲渡の場合は、事業を譲渡した「会社」になります。

一方、株式譲渡の場合は、事業を行う会社の株式を譲渡した当該会社の「株主」となります。

譲渡益にかかる課税

事業譲渡の場合は、法人に対する課税なので「法人税」を収める必要があります。

そして、その税率は「実効税率で約30%」です。

一方、株式譲渡の場合は、あくまでも個人に対する課税なので「所得税」を収める必要があります。

そして、その税率は「20.315%」と事業譲渡における税率よりも低いものです。

なお、上記はいずれも2020年現在の税率であり、今後変更となる可能性がある点に留意が必要です。

消費税

事業譲渡において、譲渡する資産のうち「課税資産」が含まれている場合は、当該資産に対して消費税が課せられます。

一方、株式は「非課税資産」であるため、株式の譲渡によって消費税は課税されません。

節税

事業譲渡の場合、事業譲渡の譲渡損益が譲渡を行った年度において発生した他の損益と合算されることになります。

そして、次の場合、事業譲渡の実行によって節税に繋がる結果となります。

譲渡益が発生する場合

  • 他の損益の合算値が純損失となる場合(=譲渡益が圧縮される)
  • 税務上の繰越欠損金が存在する場合(=譲渡益が圧縮される)
譲渡損が発生する場合

  • 他の損益の合算値が純利益となる場合(=他の損益を合算した利益が圧縮される)

株式譲渡についてみると、売り手は株式譲渡のタイミングで会社から退職金を受け取ることで、節税することが可能です。

退職所得については、株式譲渡における譲渡所得の税率よりも低くなることが一般的です。

その税率の差を利用することによって、株式譲渡実行による売り手(株主)が得られる現金が多くなるのです。

税務上の留意点

事業譲渡の場合、事業譲渡を行った後に売り手(会社)が売却収入を株主に還元する場合、さらに所得税が課税されることになります。

つまり、法人税と所得税の二重に課税されるということです。

どうしても事業譲渡の実行時における税金に頭がいってしまいますが、その後売却収入をどのように利用するかということについても税金の話がつきまとうので、それも合わせて考えておく必要があります。 

これはとても重要なことなのでしっかり頭の片隅に入れておいてください。

一方、株式譲渡の場合は、そもそも売却収入が株主に渡りますので二重課税という問題は発生しません。

ただ、譲渡所得に掛かる国税(所得税)と地方税(住民税)の課税時期が異なる点は注意が必要です。

つまり、譲渡所得に掛かる国税(所得税)は株式譲渡を行った年度に課税されますが、地方税(住民税)についてはその翌年に課税されるのです。

特に株式譲渡では譲渡所得が多額になるケースも多いので、この点を失念していると資金の手当てに支障が生じる場合がありうるので注意しておきましょう。 

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。

簡単な取りまとめではありますが、 ざっと頭の整理は出来たのではないかと思います。

事業譲渡はいろいろな面で株式譲渡とよく比較されます。

実際にどちらのスキームを選択するかという判断が求められることが実務で多々あります。

その時にキーとなる判断基準の一つが税金の取扱いです。

なのでこれを機会に、まずは外観をしっかり把握しておいてくださいね。

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