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【事業譲渡】いくらで売るの?いくらで買うの?

今回は、M&Aプロセスで一番肝となる部分と言っても過言ではない「バリエーション」について解説したいと思います。

M&Aで、売り手の希望・買い手の希望、それぞれ色々あると思いますが、やはり一番重要なポイントは譲渡価格でしょう。

それゆえ、M&Aの当事者も当然ですが、M&A専門家も十分に理解した上でバリエーション作業を進める必要があります。

今回は、事業譲渡のバリュエーションということで解説しますが、他のM&Aスキームと大きく変わるところはありません。

多分に復習となるところがありますが、もう一度確認しておきましょう。

バリュエーションプロセスの概要

当事者双方が譲渡対象事業の価値算定を行い、両者で譲渡価格の合意に至るまでに、およそ次のステップを経ることになります。

売り手のステップ
  • カーブアウト財務諸表の作成
  • バリュエーションの実施
  • 買い手への情報開示
  • 譲渡価格についての交渉
買い手のプロセス
  • 初期的分析・DDでの分析・検証
  • バリュエーションの実施
  • 譲渡価格についての交渉

バリュエーションの算定結果と譲渡価格との関係

バリュエーションの算定結果=譲渡価格とはなりません。

バリュエーションの算定結果に基づき、当事者間で交渉を行った結果、両者が合意した価格が譲渡価格となります。

バリュエーションの算定結果と譲渡価格が乖離することは一般的であり、第三者間の交渉である限り、会計・税務上特に問題となることはありません(ただし、再生案件における譲渡価格については法務的観点から注意する必要があります)。

バリュエーション実施のタイミングについて

ちなみに、売り手と買い手ではバリュエーション実施のタイミングが異なります(簡易バリュエーションを除く)。

売り手の場合は、自社の財務情報を有するので、カーブアウト財務諸表を作成後、ただちにバリュエーションを実施することができます。

一方、買い手は、売り手よりカーブアウト財務諸表等の情報開示がなされないとバリュエーションを実施することができません。

バリュエーション手法の全体像

企業価値(事業価値)を評価する方法として、以下のとおり「コストアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「インカムアプローチ」の3つのアプローチがあります。

事業譲渡においても、他のM&Aスキームと同様に、これらのアプローチが採用されます。

【コストアプローチ】

これは貸借対照表の純資産(資産総額から負債総額をマイナスした純額)に着目した評価方法です。

別名「純資産法」とも呼ばれ、中小M&Aにおいて採用されることが多い評価方法です。

メリットとしては、公平性や客観性が高いことと、経営者にわかりやすく、比較的容易に算定可能である点が挙げられます。

一方で、過去から積み上げてきた実績(純資産)での評価であり、将来の収益性が反映されていないというデメリットが指摘されます。

このアプローチに基づく手法としては、「簿価純資産法」、「時価純資産法」、「年倍法(時価純資産+のれん)」が挙げられます。

【マーケットアプローチ】

類似企業(類似した業態・規模の会社)や市場株価に着目した価値算定アプローチです。

日々変動する市場株価という客観的な指標をベースに算定することとから、算定結果はリアルタイムな価値であり、価値算定を行う会社と類似企業との相関性が高いほど、バリュエーションの精度が高くなるといえます。

また、株価は将来の一定期間の成長見込みを反映したものであるため、将来の収益性が反映されたものといえるでしょう。

一方、算定の基礎となる類似企業が存在しないとそもそもバリュエーションを行うことができないというデメリットがあります。

また、類似企業の選定したとしてもその妥当性が欠ける可能性もあります(例. 類似企業の市場株価がその企業の本源的な価値から大幅に乖離している場合)。

このアプローチに基づく手法としては、「類似企業比較法」、「類似業種比準法」、「市場価格法」が挙げられます。

【インカムアプローチ】

過去よりも将来生み出す利益(正確にはキャッシュフロー)に注目し、それをリスク等を考慮した利率(割引率)で現在価値に割り引いて企業(事業)価値を導き出すアプローチです。

このアプローチに基づく価値算定は、M&Aでの企業(事業)価値算定の他に、銀行などの金融機関の融資判断や、事業や設備投資への投資判断のために使われることもあります。

これは企業の将来性や収益性に重きを置いて算定する方法であるため、将来の収益性をベースに買収の是非を判断するM&Aに理論上最も適した方法といえます。

ただし、様々な前提条件を設定して将来予測を行うため、現実的な試算がなされているか、また公平な判断基準に基づいて評価されているかといった点に注意する必要があります。

このアプローチに基づく手法としては、「DCF法」、「収益還元法」、「配当還元法」が挙げられます。

まとめ

以上いかがでしょうか。

冒頭に述べたように、事業譲渡だからといって事業価値を算定するアプローチは、他のM&Aスキームと異なることはありません。

重要なのは、譲渡対象事業の実態に即して、どのアプローチを採用するか、そして採用するアプローチのどの手法を採用するかというところになります。

M&Aの バリュエーションは「サイエンスではなくアート」と言われることがあります。

上に述べたアプローチによる価値算定結果はここで言うサイエンスに該当し、その結果を用いて当事者間で交渉した結果(=譲渡価格)がアートと考えて良いでしょう。

文章で解説してもなかなか分かりづらいと思いますので、別途具体的な事例を用いて解説したいと思います。

楽しみに待っていてください! 

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