M&Aは交渉に始まり交渉に終わると言ってもいいかもしれません。
その交渉力の関係は、いつも一定と言うわけじゃないんですね。
時の流れにつれて変わっていったりするわけです。
そこで、売り手と買い手の交渉力がどのように変化するかについてちょっと考えてみたいと思います。
目次
売り手・買い手間の情報の非対称性とその解消の流れ(一般論)
売り手と買い手の間には情報の非対称性があることから、M&Aプロセス当初は売り手の方が交渉力が強いケースが多いです。
ちなみに現在中小M&A市場は、よっぽど不人気となる理由(例えば廃業が目の前に迫っているなど)がない限り、基本的に売り手市場となっています。
実際のところ、優良な売却案件であると、買い手が群がるほどの需要があると言われているぐらいです。
だから、現在売り手の交渉力は特に強い状況にあります。
しかし、M&Aプロセスが進むにつれて買い手に対象会社の情報が提供されていくため、情報の非対称性が修正されるようになり、買い手の交渉力が徐々に強くなります。
特にDDを経ると、売り手と買い手間の情報の非対称性がぐんと小さくなるため、さらにその傾向が強くなります。
ちなみに、基本合意の段階で買い手に独占交渉権を付与すると、それは買い手の交渉力が強くなる要素になりますね。
売り手・買い手間の情報の非対称性とその解消の流れ(一般論)
売り手・買い手の交渉力の関係において一般論から乖離する場合
売り手・買い手の交渉力の関係は、一般論として考えると上記の通りですが、次のような状況であると、異なった様相を呈します。
売り手がM&Aプロセス当初より交渉力を維持できない場合
売り手に下記のような切実な事情があると、売却を迫られる場合が多分にあります。
- 売り手に重要な健康上の問題が発生した
- 急遽多額の借財の返済を求められることになった
- 足元の業績が急速に悪化したため、資金繰りが厳しくなった
これらの場合、売却を焦ることになり、クロージングまで急を要することが多くなります。
そういった態度が見透かされると、売り手はM&Aプロセス当初から交渉力を維持できません。
M&Aプロセス当初より、買い手から「条件次第では買収してもいい」という強気のポジションを取られてしまい、条件面で多大な譲歩が求められる可能性がでてくるからです。
売り手がM&Aプロセス終盤でも交渉力を維持できる場合
対象会社が人気業種に属していたり、人気企業であるような場合です。
そうすると、売却の意向を示した場合、多数の会社が手を上げることが期待できます。だから、仮にある1社と協議して途中で頓挫したとしても、別の買い手候補を容易に見つけることができます。
そういった状況下では、売り手はM&Aプロセスの最後まで強い交渉力を維持できる可能性が高いといえるでしょう。
買い手の分析・評価が不十分なためM&Aプロセスの終盤であっても交渉力が弱い場合
買い手は、初期的検討段階やDDにおいて、対象会社について分析したり評価したりする機会があります。
しかし、買い手が能力不足であると、対象会社を十分に分析・評価が行えないため、情報の非対称性を十分に解消することができません。
そういった状況では、情報の非対称性が解消されないので、M&Aプロセスの終盤を迎えたとしても交渉力を十分に強めることができないままとなってしまいます。
買い手の交渉力が強化される一方でM&Aへの関心を喪失するケース
買い手はM&Aプロセス当初では対象会社への期待が強く、M&Aに積極的です。
そして、上述のとおり、M&Aプロセスが進むにつれて情報の非対称性が修正されるため、買い手の交渉力は徐々に強くなります。
しかしながら、そうであるのにもかかわらず。、M&Aプロセスが進むにつれて、M&Aに慎重なスタンスに方向転換することがあります
一例として、DDで様々な問題が発覚して、段々と対象会社のネガティブな実情が明らかになってきた場合が想定できます。
ただ、このような買い手のスタンスは交渉力をさらに強化するためのポーズの可能性があったりしますが。
いずれにせよ、この場合、売り手の交渉力はさらに弱いものとなるでしょう。
まとめ
以上いかがでしたでしょうか。
売り手も買い手も、足元でどれだけの交渉力を相手に対して持っているかって言う事についてきちんと把握しておく事はとても大切です。
確かに中小M&Aは友好的なM&Aです。
しかしながら、商取引の一つであることに変わらないわけなので、そういったドライな部分という部分はあるわけです。
だから、交渉力というものをしっかり気に留めながら、M&Aのプロセスを進めていきましょう。
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